2010年9月14日火曜日

鷲と鰯

久し振りに文楽を鑑賞した。今回の題目は、
・良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)
・鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)

良弁杉由来は、奈良・東大寺二月堂にある良弁杉の由来を題材にした作品。
初演は、明治20年。
近江国志賀の里の茶園に遊びに来た渚の方は、亡き夫との間の一粒種である光丸を大鷲にさらわれてしまう。その後、30年の間、狂人となり乞食となりながらも我が子を探し続ける渚の方は、花見客で賑わう淀川の大江の岸で、「南都東大寺の良弁大僧正は、幼いころ大鷲にさらわれたが、成人して大学者になられた」という話を耳にする。急いで奈良に向かった渚の方は、東大寺の僧の親切で二月堂の前にある杉の大木の元で良弁僧正との対面が叶った。渚の方が光丸に持たせていた如意輪観音像を、僧正が大切に持っていたことから、親子であることが判明し、二人は抱き合って涙にくれた。めでたし、めでたし・・・。

鰯売恋曳網は、今年没後40年を迎える作家・三島由紀夫が、昭和29年に新作歌舞伎として書いたものを、今回、文楽用に書き下ろしたもの。
鰯売の猿源氏は、京の五条東洞院の傾城・蛍火に一目惚れしてしまった。父親と博労の協力のもと、猿源氏は関東の大名に成りすまし、郭に乗り込み、蛍火と楽しい一時を過ごした。ほろ酔い気分の猿源氏は、蛍火の膝枕でウトウトし、寝言で鰯売であることがばれそうになってしまった。取り繕った猿源氏に対し、何と、蛍火は、「昔聞いた鰯売の声が忘れられない。あの鰯売と夫婦になりたい・・・」とノタマッタのである。驚き、喜んだ猿源氏は、「実は、自分は鰯売だ」と正直に告げ、二人はめでたく夫婦になれたとさ。めでたし、めでたし・・・。

悲しい話、切ない話が多い文楽であるが、今回はめでたい話2本立てである。鷲、馬、蝶、鰯と、ふざけた動物がたくさん登場したのもご愛嬌であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿