2010年6月9日水曜日

旧麻布区役所庁舎

都市空間研究の提出課題の中に、『自分の住んでいる街の近代建築をレポートせよ』と云うものがある。カメラを首にぶら下げ、レトロな建物探索にイザ出発。

我が街の近代建築(幕末から昭和戦前に建てられた建造物)と云われ、まず思い浮かんだのは旧山本有三記念館(1926年竣工)、そして国立天文台(1921年以降竣工)である。山本有三邸は、広い庭に囲まれた瀟洒な洋館で、「大正時代にこんな立派な家に住んでたなんて・・・。作家って儲かる商売だったのかしら・・・」なんて思わせるような優雅な邸宅である。国立天文台は、森の中に点在する秘密基地のようで、天体観測用のドームからは、夜な夜な怪しい飛行物体が出入りしてそうな雰囲気である。

こんな有名処はつまらない。他に無いのかしら・・・。と思い至ったのが、JR武蔵境駅近くにある日本獣医生命科学大学の建物である。高架を走る電車から見下ろすと、赤い屋根が可愛らしく、明らかに他の校舎とは異質な建物である。近くで見ても、塔屋があったり、バルコニーがあったり、縦長の窓だったりと、近代建築の香りプンプンである。ネットで調べるとすぐに分かった。何とこれは、1909年(明治42年)に建てられた麻布区役所(現在、統合され23区になった東京中心は、昔は35区あった)の庁舎だったのだ。昭和10年、麻布区役所が新庁舎に立て替えられるにあたり、不要になった旧い建物を大学が譲り受け、アメリカ人建築家ヴォーリズにより現在地に移築されたそうな。昭和10年に新築された麻布区役所は、その後、空襲により焼失してしまったそうで、旧庁舎は武蔵野の地に移築されたからこそ100年も残っている建造物ということになる。建物に歴史あり。

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